2 倫理問題、研究者倫理/問題2 適性科目/技術士第一次試験


倫理問題/問題2 適正科目/ これだけ項目集 1

◇ 倫理問題

1技術士 2適性  H29-13
功利主義と個人尊重主義 n

 倫理問題への対処法としての「功利主義」とは、19世紀のイギリスの哲学者であるべンサムやミルらが主張した倫理学説で、「最大多数の最大幸福」を原理とする。倫理問題で選択肢がいくつかあるとき、そのどれが最大多数の最大幸福につながるかで優劣を判断する。
 しかしこの種の功利主義のもとでは、特定個人への不利益が生じたり、個人の権利が制限されたりすることがある。一方、「個人尊重主義」の立場からは、個々人の権利はできる限り尊重すべきである。功利主義においては、特定の個人に犠牲を強いることになった場合には、個人尊重主義と対立することになる。
 功利主義のもとでの犠牲が個人にとって許容できるものかどうか。その確認の方法として、「黄金律」テストがある。黄金律とは、「自分の望むことを人にせよ」あるいは「自分の望まないことを人にするな」という教えである。自分がされた場合には憤概するようなことを、他人にはしていないかチェックする「黄金律」テストの結果、自分としては損害を許容できないとの結論に達したならば、他の行動を考える倫理的必要性が高いとされる。
 また、重要なのは、たとえ「黄金律」テストで自分でも許容できる範囲であると判断された場合でも、次のステップとして「相手の価値観においてはどうだろうか」と考えることである。
 以上のように功利主義と個人尊重主義とでは対立しうるが、権利にもレベルがあり、生活を維持する権利は生活を改善する権利に優先する。この場合の生活の維持とは、盗まれない権利、だまされない権利などまでを含むものである。また、安全、健康に関する権利は最優先されなければならない。

1技術士 2適性  H29-15
倫理的意思決定に関る促進要因と阻害要因

 倫理的な意思決定を行うためのステップを明確に認識していることは、技術者としての道徳的自律性を保持し、よりよい解決策を見いだすためには重要である。
 同時に、非倫理的な行動を取るという過ちを避けるために、倫理的意思決定を妨げる要因について理解を深め、人はそのような倫理の落とし穴に陥りやすいという現実を自覚する必要がある。

 倫理的意思決定に関る促進要因と阻害要因の対比は、次の通りである。
  促進要因           阻害要因
 利他主義           利己主義
 希望・勇気          失望・おそれ
 正直・誠実          自己ぎまん
 知識・専門能力        無知
 公共的志向          自己中心的志向
 指示・命令に対する批判精神  指示・命令への無批判な受入れ
 自律的思考          依存的思考

1技術士 2適性  H28-12
倫理的責務の表現

 エンジニアであるA氏は、建設会社であるB社のコンサルタントを務めているが、このところB社はその廃棄物処理慣行に関して地方紙で叩かれている。しかしこの非難の源には、市民側に誤解があり、また論争を喚起するストーリーをその地方紙が切望している事情があることを知ったA氏は、その新聞の社説欄で紹介される可能性のある記事を書いて投稿したいと考えている。

・A氏はB社の関係者ということに関わらず、誤解が受けていることを知ったコンサルタントとして、地方紙に投稿し誤解であることを市民に知らせるのが、A氏の倫理的責務である。
・A氏の倫理的責務は、地方紙に投稿する行動を起こすことであるが、A氏がB社の関係者だからB社のために、地方紙に投稿することは倫理的に適切でない。
・地方紙に投稿する記事は、A氏自身が書く必要がある。
・A氏による投稿記事は、B社による廃棄物処理慣行に関して客観的で真実を告げているだけでなく、A氏がB社と結んでいる関係を読者に開示しなければならない。

1技術士 2適性  H27-06
倫理原理の根拠

 自分や他人が下した直観的倫理的判断を、その根拠にさかのぼって考えることで、批判的に検討することが大切であり、倫理原理は、われわれの直観的判断の再検討などの作業を行うための道具にもなり得る。

 倫理原理に関しては、倫理的行為の目的を「最大多数の最大幸福」の実現に置くか、たとえ社会全体の幸福量が大きくならなくても厳守すべき、もっと重要な「義務」があると考えるか、又は、義務以上の「有徳さ」に注目するか等で、違いが生じる。

 それぞれの倫理原理には長所と短所があり、それぞれの倫理原理は互いに補い合っているように見えるが、「唯一正しい倫理原理が存在すべきである」という技術者倫理の見解はない。「複数の倫理原理から検討すべき」というの技術者倫理の共通見解である。

 いわゆる功利主義原理は、行為の動機や人々の有徳さよりも、行為の結果や人々の幸福を重視する原理である。

 功利主義原理については、公共の利益のためには少数の人の不利益は我慢すべきものだと考えられやすいとの指摘が存在する。

1技術士 2適性  H25-15
倫理的課題の判断や行動のよりどころ

・功利主義は、よい結果を生もうとするとき、そこから生み出される社会の公的な利益や福祉の総量を、極力大きくしようとする考え方。最大多数の最大幸福との言い方がよく知られている。ジェレミ・ベンサムに代表される。

・正義論は、少数者や社会的弱者の権益を守る立場から、得られた報酬や富をどのように分配するのが公平なのかを考えた理論。ジョン・ロールズに代表される。

・義務論は、人は自己の好悪にかかわりなく、普遍的になすべきこと、またなすべからざることに従うべきとする考え方。イマニュエル・カントに代表される。

1技術士 2適性  H25-12
技術者の活動と経済的な課題

 技術者が様々な活動を行うに当たり、経済性は不可欠な検討課題である。限られた予算のなかで最大の効果が得られるように努力するのはもちろんのこと、活動の透明性にも注意を払う必要がある。

 技術者Aはあるプロジェクトにおいて技術面と予算面でのリーダーを任せられている。プロジェクトが進行するに従い費用がかさみ、予算内での完成は困難と予想された。しかし技術者Aには周囲に秘密にしている技術があり、最終的にはいくらか予算を超えるが、計画よりも良い形でプロジェクトを完成させられる確信がある。技術者Aは良いプロジェクト成果を出せば予算超過は許されると判断し、上司に報告することなくプロジェクトを遂行、予算は超過したものの完成させた。
 この事例は、技術者Aは独断で予算を超過し、あらかじめ決められた成果と異なる成果を出した対応であるため、不適切である。

 技術者Bが担当するプロジェクトは、自社のBCP(Business Continuity Plan)に関係するものである。予算制約が厳しく、どのようにプラニングしても想定するすべての危機に対して対応することができない。悩んだ技術者Bは、複数ある危機のうち、その対策が安価なものから対応していくことにし、実施計画を取りまとめた。
 この事例は、価格が安価なものから実施計画を取りまとめる判断は、不適切である。プロジェクトの関係者と対応を協議すべきであった。

 技術者Cは複数のプロジェクトを任されている。プロジェクトの中間成果を報告する会議において、担当プロジェクトのなかで優先実施するものの抽出を求められた。どのようにして優先順位を決めるか悩んだ技術者Cは、費用対効果に着目し、計数できない要素は考慮しないことにして順位を定め、上司に提案したところ、計数できない評価項目を考慮するように指示された。計数できないものは技術者の主観であり客観性に欠けるので、技術者Cはこの指示を拒否し、報告書を取りまとめた。
 この事例は、上司に反して独断で遂行したため、不適切である。技術者Cは自己の主観に従い計数できない要素を評価すべきであった。

 技術者Dはあるプロジェクトを実施中である。予算管理も任されているが、少し予算超過する可能性がでてきた。プロジェクトをこのまま遂行したい技術者Dは、プロジェクトに必要な機器を、私費であれば問題ないと考え、購入して使用した。
 この事例は、技術者Dは機器を私費で購入したことにより予算を超過したことになるため、不適切である。

 技術者Eは実験を伴うプロジェクトの技術面と予算面でのリーダーを任せられている。実施中、実験の進捗が思わしくなく予定期間中にプロジェクトの完成は難しくなったが、その報告は上司に行い了承された。予算も余ることになったが、技術者Eはこれを未消化分として計上し、予算返上することにした。
 この事例は、未使用の予算額も明らかになり、次のプロジェクトの参考になるため、適切である。

1技術士 2適性  H25-14
不都合の予防的取組み n

リオ宣言第15原則
 予防的取組方法(precautionary approach)は、環境を保護するため、各国の能力に応じて広く適用されなくてはならない。深刻な、あるいは不可逆的な危害の脅威のある場合には、完全な科学的確実性の欠如を理由に、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期してはならない。
 リオ宣言の第15原則の予防的取組方法から、「因果関係が科学的に確実でない場合や、未だ結論に到達していない場合、脅威の解明はその時点において科学の限界と認め、さらなる時間を科学分析にのみ費やすことなく、必要であれば、社会的、行政的見地から早期に対策を講じるべきである」ということを導くことができる。

 不都合を予め防止する予防的取組みで考えるべきことは、次の通りである。

・技術の鑑定と公共政策策定においては、不確実性とリスクのみならず、無知に対しても認識し配慮する。
・早期警告が出されたら環境と健康についての長期的で適切なモニタリングと研究をする。
・科学の知識については“盲点”と欠落を明確にし、それを減らすように務める。
・異なる分野間の学び合いに障害となっているものを特定し、これを減らす。
・規制政策を鑑定する際には、現実世界の条件が適切に考慮されていることを保証する。
・潜在的リスクと並んで、指摘された正当性と利益を系統的に精査する。
・現に鑑定されつつある方策と並んで、必要に見合う別の選択肢をも評価する。そして、予期せぬ災害の損失を最小化し、かつ技術革新の利益を最大化することがより確実で、多様性と適応性のある技術を推進する。
・鑑定に当たっては、当該分野の専門家だけでなく、“普通の人”や地方の知識をも用いることを保証する。
・さまざまに異なった社会集団の受容と価値をすべて勘定に入れる。
・情報と意見の収集に当たっては総括的な取組みをしながらも、規制者は利益集団から独立を保つ。
・事実を知ることと行動することに対する制度的障害をはっきりさせて、これを減らす。
・懸念について合理的な基礎がある場合には、潜在的な被害を減らす行動を起こすことによって、“分析による麻痺”を避ける。

研究者倫理/問題2 適正科目/ これだけ項目集 2

◇ 研究者倫理

1技術士 2適性  H26-02
科学者の行動規範

 科学者とは、所属する機関に関わらず、人文・社会科学から自然科学までを包含するすべての学術分野において、新たな知識を生み出す活動、あるいは科学的な知識の利活用に従事する研究者、専門職業者を意味する。

 科学者は、自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し、さらに自らの専門知識、技術、経験を活かして、人類の健康と福祉、社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献するという責任を有する。

 科学者は、自らが携わる研究の意義と役割を公開して積極的に説明し、その研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性・客観性をもって公表する。

 科学者は、研究成果を論文などで公表することで、各自が果たした役割に応じて功績の認知を得るとともに責任を負わなければならない。研究・調査データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し、ねつ造、改ざん、盗用などの不正行為を為さず、また加担しない。

 科学者は、社会と科学者コミュニティとのより良い相互理解のために、市民との対話と交流に積極的に参加し、科学的な助言の提供に努めなければならない。

1技術士 2適性  H28-04  H26-03
研究における不正行為

 研究不正には、研究における「不正行為」と研究費の「不正使用」の2つがある。
 研究における「不正行為」は、次のものがあげられる。

・ねつ造とは、存在しないデータ、研究結果等を作成することである。
・改ざんとは、研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工することである。
・盗用とは、他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用することである。

 研究における不正行為は、研究者の科学者としての存在意義を自ら否定するものであり、自己破壊につながるものでもある。これらのことを個々の研究者はもとより、科学コミュニティや研究機関、競争的資金の配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない。

 故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造(ねつぞう)、改ざん及び他者の研究成果等の盗用を「特定不正行為」という。

 特定不正行為が確認された研究活動に係る競争的資金等において、配分機関は、特定不正行為に関与したと認定された研究者及び研究機関に対し、事案に応じて、交付決定の取消し等を行い、また、当該競争的資金等の配分の一部又は全部の返還を求めることができる。

 他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどは、研究者倫理に反する行為として認識されており、不正行為に該当する。

 不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止と併せ、まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。

 研究機関において、研究者等に求められる倫理規範を修得等させるための研究倫理教育を実施することは、研究者倫理を向上させることになるとともに、不正行為を事前に防止し、公正な研究活動を推進する環境整備となる。

1技術士 2適性  H29-14
研究発表・投稿に関する研究倫理

 研究の自由は、科学や技術の研究者に社会から与えられた大きな権利であり、真理追究あるいは公益を目指して行われ、研究は、オリジナリティ(独創性)と正確さを追求し、結果への責任を伴う。

 研究が科学的であるためには、研究結果の客観的な確認・検証が必要である。取得データなどに関する記録は保存しておかねばならない。データの捏造(ねつぞう)、改ざん、盗用は許されない。

 研究費は、正しく善良な意図の研究に使用するもので、その使い方は公正で社会に説明できるものでなければならない。研究費は計画や申請に基づいた適正な使い方を求められ、目的外の利用や不正な操作があってはならない。

 論文の著者は、研究論文の内容について応分の貢献をした人は共著者にする必要がある。論文の著者は、論文内容の正確さや有用性、先進性などに責任を負う。共著者も論文全体の内容に関して責任を持つ必要がある。

 実験上多大な貢献をした人が、研究論文や報告書の内容や正確さを説明できなければ、共著者になれない。

 学術研究論文では先発表優先の原則がある。著者のオリジナルな内容であることが求められる。先人の研究への敬意を払うと同時に、自分のオリジナリティを確認し主張する必要がある。そのためには新しい成果の記述だけではなく、その課題の歴史・経緯、先行研究でどこまでわかっていたのか、自分の寄与は何であるのかを明確に記述する必要がある。

 論文を含むあらゆる著作物は著作権法で保護されている。引用には、引用箇所を明示し、原著作者の名を参考文献などとして明記する。図表のコピーや引用の範囲を超えるような文章のコピーには著者の許諾を得ることが原則である。

1技術士 2適性  H27-07
研究活動の不正行為ガイドライン n

 文部科学省(以下「文科省」という。)は、2014年8月に「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(以下「新ガイドライン」という。)を発表した。
 その中で不正行為に対する基本姿勢として、「研究活動における不正行為は、研究活動とその成果発表の本質に反するものであるという意味において、科学そのものに対する背信行為であり、また、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げるものであることから、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。」としている。
 新ガイドラインの策定は、2006年に制定された「競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン」(以下「旧ガイドライン」という。)以来のことである。
 新旧のガイドラインはともに「ガイドライン」と称されるが、その性格や対象となる機関、行政の関与の姿勢などに関して大きく異なる。

 新ガイドラインの最大の特徴は、文部科学大臣決定として定められたことである。ただし、旧ガイドラインが審議会報告の一部と位置付けられたのと同様に、新ガイドラインは、文科省が行政的措置をとる際の根拠となる。

 新ガイドラインは、文科省が機関に対して履行状況調査を実施することを規定している。履行状況次第では文科省が「研究機関に対し、体制整備等の不備について改善事項及びその履行期限を示した管理条件を付す」、文科省の判断に基づき「競争的資金の配分機関は、その研究機関に対する競争的資金における翌年度以降の間接経費措置額を一定割合削減する」、それでも十分でないときは、文科省の判断に基づき「競争的資金の配分機関は、その研究機関に対する翌年度以降の競争的資金の配分を停止する」と規定している。

 新ガイドラインは対象とする範囲を拡張しており、研究者や大学院生のみならず学部生さらには研究支援人材など、広く研究に関わる者について研究倫理教育を実施することを明確に要請するなど、研究倫理教育の観点からガイドラインの対象者を拡張した。

 新ガイドラインは、対象とする研究活動も拡張した。「文部科学省及び研究費を配分する文部科学省所管の独立行政法人の競争的資金を活用した研究活動」から「競争的資金等、国立大学法人や文部科学省所管の独立行政法人に対する運営費交付金、私学助成等の基盤的経費その他の文部科学省の予算の配分又は措置により行われる全ての研究活動」に拡張した。

 新ガイドラインは、機関の管理責任を明確にし、事前防止のための組織的取組を推進するため、研究不正に関わった個人のみならず、所属機関の責任を問い、場合によっては機関に対する措置を講じるものとした。

1技術士 2適性  H27-08
実験ノートのあり方

 これまでの日本における実験ノート(ラボノート)の扱いは、研究者個人の「実験の記録」又は「備忘録」として扱われることが多く、「個人にとってわかりやすい、使いやすいものであればよい」という考え方が主流であった。
 しかし「STAP細胞」をめぐる論文の不正疑惑を契機として、捏造、改ざん、盗用など研究活動の不正行為等に関わる調査において、実験ノートのあり方が注目されている。

 実験ノートは、原則として綴じてあるスタイルのものを使用し、記載はペンやボールペンなど消せないものを使用する。

 実験ノートは、特許紛争の回避や特許所有権の明確化にも効果的である。このため、大学や研究機関だけでなく、企業の研究者も活用することが望ましい。

 研究機関は研究者に対して一定期間研究データを保存し、必要な場合に開示することを義務付ける旨の規程を設けることが求められている。

 実験ノートはわかりやすさと正確さが最も重要であり、あいまいな表現や記載に誤りがある場合は、線を引いて見え消しとして修正する。修正液を使ったり、そのページを廃棄するのは不適切である。

 実験ノートは、研究者個人ではなく研究室の組織に帰属するものであるため、研究者が別の研究機関に異動する場合、実験ノートは個人の判断で持ち出してはならない。

1技術士 2適性  H24-15
研究者の倫理

 AはP教授の研究室に所属する大学の研究者である。現在、Aが担当する研究テーマは、会社CからP教授が受けた委託研究である。研究計画に基づいて、試作装置を作り、実験と試作装置の改良により、よい結果を得ようと努力を続けている。
 最近までの研究の進捗は良好で、いろいろな実験データも得られ、考察も深まってきている。P教授の機嫌もよい。AはP教授に不都合のある報告や相談をすることには、ためらいがあった。そのようなときにP教授は決まって不機嫌になり、また、十分な時間を取ってもらえないからである。P教授の機嫌がよいことは、Aにとってもうれしいことであった。また、C社はその状況に満足しており、P教授に対して次期の研究を委託する可能性があることを伝えており、AはそのことをP教授から聞いている。また、Aは締切りが間近に迫った学会論文募集に投稿するように求められている。
 そのようなある日、Aはいつものように実験を続けた。実験に一区切りついたのが、夜も遅くなっていたので、コンピュータに自動的に蓄積されているデータのまとめは翌日にすることにして、帰宅した。翌日、まとめを行い、結果を見てAは驚いた。明らかに今までの結果からは説明できない。しかも、それはC社が期待する方向と逆の結果になっている。咋晩の実験自体に何か誤りがあったのかもしれない。早速確認のための再試験を行おうとしたが、試作装置の具合が悪い。原因を調べたが分からない。解決には時聞がかかりそうである。学会の論文締め切りまでにめどをつけることはまず不可能に思われた。C社からの委託研究期間内に解決できない可能性も、Aの脳裏をよぎった。

 Aはどのようにするべきかについては、次のような内容である。

・「咋晩の実験自体に何か誤りがあったのかもしれない」とAも疑問を持っているため、すべての実験結果を使って学会論文を作成してはならない。
・早急に確認試験ができないので、直前の実験データを使わないことにし、以前から蓄積してきたデータを用いて、論文を作成することは、Aにとって都合の良いデータだけを使うことになるため、正しくデータの分析ができない。
・以前から蓄積してきたデータから、咋日の実験で得られるはずのデータは推定できるので、それらを用いて論文を作成することは、不都合なデータを排除、ねつ造したことになるため不適切である。
・C社からの次期の委託契約が得られなくなるとすれば大きな問題であが、C社に不都合なデータを排除するのは不適切である。
・不具合となった試作装置の見通し(いくつかの可能性)を早急に詰めた上で、P教授に相談する。

倫理問題、研究者倫理/問題2 適性科目/過去問からの出題傾向

技術士第一次試験/問題2 適性科目

◎は、予想が的中したものです。

重点予想 H30 H29 H28 H27 H26 H25 H24
◇ 倫理問題
 功利主義と個人尊重主義 n
 倫理的意思決定に関る促進要因と阻害要因
 倫理的責務の表現
 倫理原理の根拠
 倫理的課題の判断や行動のよりどころ
 技術者の活動と経済的な課題
 不都合の予防的取組み n
◇ 研究者倫理
 科学者の行動規範
 研究における不正行為
 研究発表・投稿に関する研究倫理
 研究活動の不正行為ガイドライン n
 実験ノートのあり方
 研究者の倫理
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