コンクリート診断士試験の解答例/記述式問題B 土木系B-2


コンクリート診断士試験の解答例/記述式問題B 土木系B-2 1

B21. RC橋(上部工)の、塩害の調査方法、補修と対策、維持管理計画 (1,200字)

 RC橋の上部工では車を直接支持するので、繰り返し荷重による疲労が損傷の一つの原因となる。また、融雪剤や海岸付近における飛来塩分は外部から供給される塩害の原因である。内包された塩化物イオンは、建設時に使用された海砂などの骨材の洗浄不足等によるものであり、これも塩害の原因の一つである。

調査方法

 塩害による損傷の外見上の特徴としては、鉄筋軸方向のひびわれ、錆汁、コンクリートの剥離や鉄筋の断面減少などが挙げられる。上部工の場合、橋面舗装で床版が目視できないため、橋面舗装のひび割れ状況からその下の床版の損傷状況を推測する。橋面舗装のひび割れは舗装材料の劣化によって発生する場合も多いが、舗装の補修を繰り返すような個所は床版上部も劣化している場合がある。この場合、橋の下から床版下部の状況を把握するとともに、ひび割れが発生している個所の橋面舗装を撤去して、床版上部の損傷も調べる必要がある。床版の上面だけが劣化するパターンは融雪剤の散布が原因の場合に多く見られ、上、下面ともに劣化している場合は、床版コンクリート全体がぜい弱化しており、劣化状況としてはかなり深刻である。床版下部のひび割れは日常的な点検では近接して調査していない場合が多く、遊離石灰や錆汁を伴わない無着色のひび割れについても十分調査を行う必要がある。

補修と対策

 鉄筋位置での塩化物イオン量が発錆限界値とされる1.2㎏/m3以下であれば、表面被覆によって塩分の供給を防ぐのが有効である。塩分量がそれより多い場合、塩分を含んだコンクリートをはつり落とし、断面を修復した後、表面被覆して塩分を遮断するのが補修の基本となる。鉄筋位置での塩化物イオン量が2.5㎏/m3以上であれば塩分を完全に除去するのは難しいため、電気防食工法も有効となる。
 実際の補修工事では交通規制などの制約条件を受けるので、損傷状況に応じた最善策を採用できるとは限らない。交通量が多い路線等では、交通規制を伴わない床版下面からの対策で長寿命化が図れる損傷段階を調査で見落とさないことが、日常の維持管理業務で重要なポイントになる。

維持管理計画

 橋梁は補修のタイミングによっては、全面通行止めが必要になるなど、使用できない期間の社会経済的な損失も伴う。この損失をどう見積もるかも維持管理計画策定時の重要なポイントになる。既設の構造物の場合、初期コストを含めずに補修・補強計画を検討する時点以降にかかるトータルコストを評価する「余寿命LCC(RLCC)」を検討し、補修のコストと効果の継続時間について総合的な検討を行うことが望ましい。

B22. RC橋脚(橋台)の、塩害の調査方法、補修と対策、維持管理計画 (1,200字)

調査方法

 塩害は、コンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンによって促進され、鋼材の体積膨張がひび割れや剥離・剥落を起こしたり、鋼材の断面減少が生じたりすることにより構造物の性能が低下する現象である。
 塩化物イオンは、飛来塩分・海水や凍結防止剤のように外部環境から供給されるケースと、コンクリート製造時に含まれるケース(除塩が不十分な海砂を使用)に分けられる。橋脚・橋台は波打ち際や河川内などの厳しい条件下に置かれるため、特に外部条件への配慮が重要であり、塩化物イオンが供給される条件を踏まえた調査が必要である。
 調査方法としては「外観目視調査」を行った後、塩害の劣化指標として「塩化物イオン量」「鋼材腐食量」を調べる。また、塩害環境や腐食速度を判断するために「電気化学的指標」「飛来塩分量」などをも適宜実施する。また、塩害と中性化の複合劣化の可能性を調べるため、「中性化深さ」を調査することも重要である。
① 外観目視調査
 目視調査では「腐食ひび割れ」の発生状況、錆汁、浮き、剥離・剥落の有無や面積を調べる。橋脚・橋台の場合、一般的に被りが厚い(100mm程度以上)ため、鉄筋方向に沿ったひび割れや錆汁以外にも、「広範囲の浮き」が生じるケースがあることに注意する必要がある。そのため、目視調査だけでなく、テストハンマーによる打音検査が必須である。
② 塩化物イオン量
 塩化物イオン量は、発錆限界塩化物イオン量である「1.2~2.5kg/m3」などが一般的な基準となる。測定方法としては「重量法」「容積法」「電気化学的方法」などがある。
③ 鋼材腐食量
 鋼材の腐食状況を把握するため、鋼材試料を採取して発錆面積や鋼材質量減少量を調べる。
④ 電気化学的指標
 電気化学的指標としては「自然電位法」「分極抵抗法」などがある。

補修と対策

 塩害対策としては「表面処理工法」「断面修復工法」「電気防食工法」「脱塩工法」があるが、塩害の補修方法の基本は「劣化部分をはつり落とし、断面修復する」ことである。鋼材の腐食が始まっている場合は、鋼材の奥側まで塩化物イオンが浸透しているのでその深さまではつり取ることが重要となる。
 断面修復では、ポリマーセメントモルタルを塗る、グラウトモルタル注入、鋼繊維超速硬モルタル吹き付けなどがある。修復断面が大きい場合は、格子状にFRPを格子状に設置して断面修復材の収縮ひび割れや剥離・剥落を防止する措置を行う。橋脚・橋台は先述のとおり外部環境が厳しいため、樹脂系塗料などによる表面被覆を併せて施工し、塩化物イオンの侵入を防ぐことが重要である。

維持管理計画

 塩害は劣化の進行速度が早いため、軽微なひび割れであっても詳細に観察することが予防保全に有効となる。
 補修後の維持管理では、「断面修復部のひび割れや剥離・剥落の有無」「表面被覆材の劣化によるひび割れや剥離、漏水」の点検がポイントとなる。表面被覆を行った場合は、被覆内部が見えないため、被覆材の変色に留意して観察する。

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B23. RC橋(上部工)の、アルカリ骨材反応の調査方法、補修と対策  (1,200字)

調査方法

 アルカリシリカ反応(ASR)は、アルカリシリカ反応性鉱物を含む骨材(反応性骨材)がコンクリート中の高アルカリ水溶液と化学反応してアルカリシリカゲルを生成し、これが水分供給により膨張する現象である。この膨張圧によりコンクリートにひび割れが発生する。我が国においては、1986年にアルカリ骨材反応抑制対策が規定されているため、新規構造物に比較すると、1980年代以前に築造された構造物において、特にASRによる劣化に注意する必要がある。
 ASRによるひび割れは一様ではなく、反応性骨材の混入量、環境条件(温度、湿度、日射、水分供給等)、鋼材量、外部高速条件によって異なる。よって、調査方法としては「外観目視調査」に加えて、「採取コアによる各種試験」「ひび割れ観測」等を行う。
① 外観目視調査
 ASRによる変状としては、ひび割れ、変位・変形、段差、変色、ゲルの滲出、被りコンクリートの剥離・剥落などがある。
 ひび割れは、亀甲状に入ることが基本であるが、主桁のように軸方向鋼材が入っている場合は亀甲状のひび割れに加えて、軸方向に沿った方向性のあるひび割れが発生することが多い。また、梁端部のように拘束力の小さい箇所では、被りコンクリートの剥離・剥落が生じやすい。
 ASRは、海水や凍結防止剤による塩害、凍害との複合劣化との影響もあるため、使用条件・環境条件を踏まえた調査が必要である。
② 採取コアによる各種試験
 ASRの疑いのある箇所からコアを採取して下記の項目を調査する。
 ・骨材の岩種・反応性鉱物の種類 :偏光顕微鏡観察、粉末X線回折 等
 ・骨材のアルカリシリカ反応性 :化学法及びモルタルバー法、促進モルタルバー法 等
 ・アルカリシリカゲルの判定 :偏光顕微鏡観察、化学成分分析(蛍光X線回折等)、
                  酢酸ウラニル蛍光法、SEM観察 等
 ・アルカリ量、塩化物量 :化学成分分析
 ・残存膨張量の予測 :JCI-DD2法 等
 ・力学的性質 :圧縮試験 等

補修と対策

 ASRの補修は「水分供給の抑制」が基本であり、これに加えて「コンクリート内部の水分の散逸促進」「アルカリ分供給の抑制」「劣化部分の除去」を検討する。
 ASR対策においては、部材が膨張過程のどの段階にあるかを踏まえた検討が必要であり、対策工法としては、「ひび割れ注入工法」「表面処理工法」「断面修復工法」「膨張抑制工法(外ケーブル補強)」などを併用して施すことが多い。

維持管理計画

 ASRにおいては、構造物がASRの膨張過程(潜伏期、進展期、収束期、終了期)のどの段階にあるかを把握することが、構造物の安全性・使用性能への影響を判定することが基本となる。したがって、採取コアによる残存膨張量予測と併せて、現地ひび割れ観測(分布状況の記録、コンタクトゲージによるひび割れ幅の計測、ゲル滲出の確認等)を定期的に行い経時的な変化を比較したうえで、劣化予測に基づく評価が重要である。
 ASRによるひび割れ幅が小さく、反応ゲルや炭酸カルシウムなどでひび割れが充填されている場合、水や空気のコンクリート内部への侵入が抑制され鉄筋は健全である場合が多い。このような場合は、ひび割れ注入工法は困難であり、表面被覆は外観目視観察を難しくする。よって、上部からの水分供給を抑制する措置を行った上で経過観察するような検討が必要である。

B24. RC橋脚(橋台)の、アルカリ骨材反応の調査方法、補修と対策  (1,200字)

橋脚は波打ち際や河川内などの過酷な環境下に位置するため、床版や橋桁に比べてアルカリ骨材反応等の劣化が起こりやすい。また、洗堀によって傾く場合など上部構造とは荷重条件が異なることも特徴である。

調査方法

 劣化の現状把握を目的に、構造物の全域あるいは劣化を代表する箇所において、表面のひび割れ、変色、ゲルの滲出などの変状を把握する調査を実施する。これらの調査は近接で行うことを原則とし、目視では確認できない個所等では必要に応じて橋梁点検車等も使用する。
 次に詳細調査が必要と判定されたものについて、現在のコンクリートの品質を把握し、将来的な劣化の程度を予測するため、「コア採取」により圧縮強度、静弾性係数、膨張量試験などを行う。調査結果から構造物全体の評価と将来的な劣化予測を行い、補修設計に反映させる。

補修と対策

 アルカリ骨材反応は反応を促進する水分の供給を抑制することが重要な補修方針であり、「表面被覆工法」が有効である。ただし、コンクリート内部からの劣化であるため、抜根的な対策工法は開発されておらず、補修後も点検・観察により維持管理を行う必要がある。
 膨張が進行中の場合、コンクリート表面保護材は水分を透過しにくく、ひび割れ追従性が0.8㎜以上と高いエポキシ樹脂等の材料を選定する。膨張が終了している場合は、塗膜の透過量が30ml/m2・日以下、ひび割れ追従性が0.4㎜以上の材料を選ぶ。
 コンクリートの強度が低下している場合は断面修復を行う。この際、反応が終了したコンクリートに新たなアルカリ分を供給しないよう、低アルカリ性セメントを使用したモルタルや樹脂モルタルなど、低アルカリの材料を選定する。既存の躯体と断面修復材との界面にプライマーを塗布して、アルカリ分の供給を防ぐ方法も有効である。
 鉄筋破断が認められ、耐荷性能の低下が懸念される場合は、構造物あるいは部材全体の剛性を考慮して耐荷力の回復・向上の回復を図る工法を選定する。

維持管理計画

 日常的な点検で橋脚の近接調査ができない場合、橋梁点検車等の設備を用いての点検の頻度を予め決めておき、既存の調査結果と合わせて、アルカリ骨材反応の進行の程度を把握し、次の補修計画の判断材料とすることが望ましい。
 また、橋脚は床版や橋桁に比べて劣化の要因が多様であるため、日照方向、風雨の当たる個所、上部工からの排水状況、河川の流れ、温度や湿度等、外的環境にも着目して点検、記録していくことが望ましい。

コンクリート診断士試験の解答例/記述式問題B 土木系B-2 3

B25. RC橋(上部工)の、凍害の調査方法、補修と対策、維持管理計画 (1,200字)

凍害は、78年、JIS A5308「レディーミクストコンクリート」でAEコンクリートが標準となってからは、構造物全体が劣化するような大きな問題となっていない。しかしながら1978年以前に施工された橋梁は現在でも全橋梁数の6割近くを占めており、橋梁の劣化原因の主要な一つとされている。

調査方法

 上部工では繰り返し荷重による舗装のひび割れから雨水が侵入し、床版上部に土砂化現象が進行し、床版内部までひび割れが進行するという劣化のメカニズムが指摘されている。これが床版のひび割れや抜け落ちの原因となっている。
 そのために調査では床版の損傷パターンに着目する。車輪が乗る位置を中心に橋梁全体に渡って床版が損傷している場合と、床版の一部だけが損傷している場合とを調査によって区別する。後者の場合は雨水がたまったり、局所的にコンクリートの品質が低かったり、といった劣化の原因があると考えられ、補修を行うと同時に、原因を排除することが望ましい。

補修と対策

 床版の補修の工法は、下面補修工法、上面補修工法、打ち替え工法等があり、床版の損傷状況に応じて選定する。調査で得たひび割れ間隔や貫通の度合い、コンクリート品質の良否が工法選定の目安となる。
 下面補修工法はひび割れ注入工法、断面修復工法に代表され、床版下面に作業足場を設け、床版コンクリート下面に向かって上向きに施工するものである。橋梁を供用しながらの施工が可能なのが特徴である。
 上面補修工法には橋面防水工法、上面増し厚工法等がある。施工には車線規制が必要なことから、道路の使用状況に応じた補修計画が重要になる。また、全面通行止めを行わない限り、規制区間毎に打ち継ぎ目が生じ、補修後に新たな凍害を引き起こす原因にもなる。施工の際には目荒らし等の処理を施し、打ち継ぎ部の一体化を図る。
 床版打ち替え工法は部分的な打ち替えの場合、新たに打設した部分をできるだけ旧床版の状態に近い性状とする必要がある。打ち替え部分が周辺の古い部分と性状が異なると、周辺部分の新たな劣化原因となる。
 近年は、床版の耐久性向上には橋面防水工法が不可欠との認識が高まり、床版の下面補修を行う場合にも橋面防水工法を併用する事例が増えている。

維持管理計画

 直轄国道では平成16年より全橋梁で5年に1回の点検を実施している。
 先にも述べたように、上面補修工法、床版打ち替え工法は施工に車線規制が必要となるため、下面補修工法で対応できる段階を見極めることが重要な課題となる。診断、措置、記録、点検のメンテナンスサイクルを実施し、LCCを最小にしていく維持管理計画を策定する。

B26. RC橋脚(橋台)の、凍害の調査方法、補修と対策、維持管理計画 (1,200字)

調査方法

 凍害はコンクリート中の水分の凍結時に発生する膨張圧によって生じるものであり、継続的な凍結・融解の繰り返しによってコンクリートが劣化する現象である。凍害が生じたコンクリートには、表面に「スケーリング」「微細なひび割れ」「ポップアウト」が発生する。
 特に橋脚・橋台は水と直接接する構造物である上に日射が良いため、凍結・融解の繰り返しが多く、凍害が生じやすい環境条件にある。また、上部工からの排水が橋台・橋脚に流れ、水掛かりが集中している箇所も凍害が発生しやすい。
① 外観目視調査
 外観目視調査では下記の変状に注意する。
 スケーリング:コンクリート表面のペースト部が薄片状に剥離・剥落する。橋台・橋脚の場合は、飛来塩分や凍結防止剤からの塩分が凍害と複合劣化を起こしてスケーリングを進行させる傾向がある。
 微細なひび割れ:コンクリート表面のペースト部で紋様や地図状に発生する
 ポップアウト:コンクリート表層部にある骨材の膨張によって表面が円錐状に剥離・剥落する
 凍害が加速期~劣化期に入ると、凍害深さが大きくなり鋼材の腐食が始まり、使用性能・安全性能に影響を及ぼす。
② 凍害発生要因の調査
 凍害発生要因は「水分供給」「コンクリート品質」「環境要因」の3つである。
 水分供給:水分の供給源(橋梁上面からの漏水、雨、雪、海水、河川水 等)
 コンクリート品質:骨材(軟石、高吸水率)、単位セメント量、単位水量、空気量、
          施工時の打ち込み・締固め品質・養生方法
 環境要因:最低気温、日射、凍結融解繰り返し回数

補修と対策

 凍害対策では、劣化部分のみをウォータージェットなどではつり落として、断面修復(ポリマーセメント等)した上で、排水対策を施して水分供給を抑制することが基本である。
 コンクリート表面への水分供給を抑える方法として、表面被覆工法も有効である。被覆材には透水性の優れた材料(エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン系等)を使用するケースが多い。
 排水対策としては、路面排水が伸縮装置などから橋台・橋脚に落ちないようにする排水処理や、橋台・橋脚の天端面外周に水切りを設置して側面部への水掛かりを抑える方法などがある。
 劣化期に入り耐荷性能に影響を及ぼしている場合は、補強工法(FRP・鋼板接着、巻き立て)や打換えの検討も必要である。

維持管理計画

 凍害は、わずかなコンクリート品質の差や環境条件の違いにより、劣化の進行程度に大きな差が生じる。また、劣化が始まると、加速度的に進行する傾向がある。したがって、凍害の劣化予測は困難な点が多い。一方、軟石骨材によるポップアウトのように、発生が落ち着いた時点で劣化進行が収まるものもある。
 したがって、橋脚・橋台の凍害調査においては、構造性能の低下(コンクリート断面の減少、力学特性の低下、鋼材腐食)、剥離・剥落による第三者影響、美観を踏まえた補修の要否判定が必要である。


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